
私はテレビのない生活をしているので、NHKの「らじる★らじる」でラジオ番組を聴くのが毎日の楽しみです。先日、「高橋源一郎の飛ぶ教室」に脳科学者の池谷裕二さんが出演し、生成AI(AI)の活用についてとても興味深い話をされていました。一般の人にもわかりやすい著書を数多く出されている方です。
池谷さんの趣味は「英語の科学論文を読むこと」。一日に100〜500本もの論文に目を通すそうです。といっても、すべてを自分で読むのではなく、AIに自分の関心分野の論文を探してもらい、新聞を読むように要約を眺めているのだとか。
生成AIには「チャッピー」という名前をつけ、家族の一員のように話しかけているそうです。車を一人で運転するときもAIと会話を楽しみます。どんな分野の話題でも、AIは博士レベルの知識があり会話がはずむようです。相手の理解度に合わせて説明の仕方を変えてくれるので、子どもの教育にも最適なのだそうです。AIは決して怒らないし、嫌な顔をせずに何度でも説明してくれます。
学生が提出するレポートについても、「生成AIを最初から使うことを推奨している」と話していました。ただし、AIを使えば楽になるというわけではありません。むしろ、自分の個性や考えをどう表現するかが問われるため、より深く考え、時間をかける必要があるのです。
印象的だったのは、「AIにできなくて人間にできることは、例えば、苦しがっている人に手を握ることだ」という言葉でした。触れ合い(手あて)・・それこそが人間にしかできない大切な営みなのだと思います。
AIの誤用や偏りには注意が必要ですが、これから10年、20年後の医療を支える皆さんには、恐れずにAIを積極的に活用してほしいと思います。患者さんの置かれた状況を理解し、心から寄り添い、そして優しく手を握る・・その心の温もりは、どんな時代でも医療に最も大切なことです。