
人生では、愛する人との別れや失恋など、思いがけないショックな出来事を経験することがあります。そんな時は気持ちが沈み、食欲がなくなり、何もする気が起きません。
多くの場合、時間とともに少しずつ心は回復し、1か月ほどで元気を取り戻していきます。けれども、1か月以上たっても気分が晴れず、何をしても楽しめない状態が続くときは、うつ病の可能性があります。
うつ病の症状には、不眠や食欲低下、めまい、倦怠感、頭痛、動悸、便秘や下痢など、さまざまな体の不調が現れることもあります。
二質問法(うつ病の簡単なスクリーニング)
次の二つの質問が、うつ病を見つけるきっかけになります。
①最近1か月のあいだに、気持ちが落ち込んだり、憂うつになったり、絶望的な気分になることがありましたか?
②最近1か月のあいだに、小さなことに悩まされたり、何をしても楽しくないと感じることがありましたか?
このうち一つでも当てはまる場合は、以下のような症状があるかどうかを確認します。
うつ病の診断基準(DSM-5)
最近2週間のあいだに、次の症状のうち、5項目以上(上記の①か②は必ず含む)があるとき、うつ病と診断されます。
- 抑うつ気分
- 日々の活動における興味や喜びの喪失
- 体重の減少または増加
- 不眠または過眠
- 精神運動の焦りまたは動作の鈍さ
- 強い倦怠感
- 無価値感や過度の罪悪感
- 思考力や集中力の低下
- 死や自殺について繰り返し考える
うつ病は、命に関わることもある重大な病気です。もし思い当たることがあれば、ひとりで悩まず、できるだけ早く教員や信頼できる人に相談してください。ときに、気分が高揚して眠らなくても平気になり、考えが止まらなくなる「躁状態」になることがあります。これも心の不調のサインです。
うつと一緒に現れる「不安」
うつ病の人の中には、不安を強く感じて日常生活が難しくなる不安障害を併発することがあります。主なタイプを以下に示します。
- 全般性不安障害:細かいことがひどく気になりますか?
- 社会不安障害:人前で話すことに強い緊張を感じませんか?
- 強迫性障害:手洗いや鍵の確認に、何度も時間を取ってしまうことはありますか?
- パニック障害:急に心臓がドキドキして息が吸い込みにくく、このまま死んでしまうのではと不安になったことはありますか?
- 外傷後ストレス障害(PTSD):過去のつらい出来事が、突然よみがえることはありますか?