学校長の部屋

2026.01.24

絶対音感

「絶対音感」とは、音の高さを瞬時にとらえ、「ド」「レ」「ミ」といった音名として正確に認識できる能力のことです。日本人では、およそ1000人に1人が持つといわれています。作曲や楽器演奏の世界では、きわめて恵まれた才能のひとつでしょう。

最相葉月さんの著書『絶対音感』によれば、音楽を聴けば、いま何の音が鳴っているのかすぐにわかる。聴いたとおりにピアノが弾ける。本当に便利な能力のようです。

実際、モーツァルトやベートーヴェンは絶対音感を持っていたとされます。一方で、チャイコフスキーにはなかったともいわれています。絶対音感が音楽の創造性そのものと、どのように結びついているのかは、いまだはっきりしていません。

ただし、この特別な感覚は、いつも良いことばかりをもたらすわけではないようです。
クラッシック音楽をバックグラウンドミュージックとして流しても、音はすべてドレミの言葉として聴こえ、勉強にはたいへんな障害になる場合があります。

かつて私は、絶対音感を持つ20代の医学生に出会ったことがあります。超絶技巧を要するリストの作品を含め、ほとんどすべてのピアノ曲を弾くことができる才能の持ち主でした。しかし、風呂が沸いたことを知らせる音声が「ドレミ」として聞こえてしまい、戸惑うことがあると話してくれました。

人によっては、トイレの流水音やドアチャイムまでもが音名として認識され、煩わしく感じることがあるそうです。


絶対音感は確かに便利な能力です。しかし同時に、日常のなかで静かに重荷となることもある。そんな一面を持った、不思議な才能なのかもしれません。