学校長の部屋

2026.02.5

高血圧

高血圧は、喫煙に次いで「命を縮める」最大級の危険因子です。多くの場合、痛みも苦しさもありません。しかし、血圧が高い状態が続くと、眼、血管、脳、心臓、腎臓といった大切な臓器は、静かに、確実に傷ついていきます。看護師がこの病気を理解し、早く気づき、正しく関わることの意味は、非常に大きいのです。

高血圧の約90%は本態性(一次性)高血圧です。つまり、はっきりした原因がわかりません。一方で、二次性高血圧と呼ばれるタイプもあります。慢性腎疾患、腎動脈狭窄、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、甲状腺機能亢進症、睡眠時無呼吸症候群などが原因になります。「なぜ高いのか」を考える視点を持つことは、看護師にとっても重要な臨床力です。

血圧は、最も基本的で、最も重要なバイタルサインのひとつです。しかし意外なことに、正しい血圧測定を体系的に学んだ医療者は多くありません。

だからこそ、皆さんにはぜひ、「血圧を正しく測れる看護師」になってほしいと思います。

正しい血圧測定のポイント

  • 測定30分前から、カフェイン・運動・喫煙を避ける
  • 排尿を済ませる
  • 背もたれのある椅子に座り、脚を組まず5分以上安静にする
    ※ベッド上での測定は避けます
  • 測定中の会話は禁止
  • 衣類で上腕を圧迫しない
  • 上腕は心臓と同じ高さ(胸骨中央)に
  • 正しいサイズのカフを使用する
  • できれば聴診法で測定する
  • 2回以上測定し、その平均値を用いる

血圧は測り方で変化する情報だということを、忘れないでください。

高血圧の診断基準は、国や学会によって異なります。

  • 米国(American College of Cardiology / American Heart Association)
    診察室血圧 130/80 mmHg以上 を高血圧と定義
  • 欧州(European Society of Cardiology)
    診察室血圧 140/90 mmHg以上 を高血圧と定義


大切なのは、一度の測定で決めつけないこと、そして 家庭血圧や24時間自由行動下血圧測定(ABPM)を活用する視点です。白衣高血圧や仮面高血圧を見逃さないことも、看護の大切な役割です。

高血圧治療の第一歩は、生活習慣の改善です。

  • 体重を10kg減らすと、血圧は5〜10mmHg下がります
  • 減塩を意識した和食中心の食事
  • 野菜や果物によるカリウム摂取
  • 毎日30分程度の運動

必要な場合には、薬物療法を行います。降圧薬は、脳卒中・心筋梗塞・心不全を大きく減らすことがわかっています。高齢者では、厳しすぎる降圧によって立ちくらみや転倒が起こることがあります。

年齢、心血管リスク、生活背景、そして患者さんの思い。それらを丁寧に聞き取り、一緒に治療を考える(SDM:共同意思決定)姿勢が、看護師には求められます。

血圧は、患者さんの未来を静かに映す鏡です。看護師は、血圧の番人です。その役割の重さと誇りを、ぜひ胸に刻んでください。