学校長の部屋

2026.02.17

糖尿病

看護師国家試験を終え、3年生の皆さんは、まもなく卒業の日を迎えます。この学校で積み重ねてきた「知識」と「技術」、そして何よりも、人に寄り添う「優しさ」を胸に、どうか困っている人を支えてあげてください。私たちは、これから始まる皆さん一人ひとりの歩みを、いつでも誇りに思っています。

糖尿病とは、血液の中にあるブドウ糖、すなわち血糖が、長い時間をかけて高くなっていく病気です。血糖を調節しているのは「インスリン」というホルモンですが、その分泌が不足したり、働きが弱くなったりすると、体の中で静かに異変が起こり始めます。

高血糖が年単位で続くと、血管は少しずつ傷ついていきます。その影響は、目には網膜症として、腎臓には腎症として、神経にはしびれや痛みとして現れ、やがて心臓や脳に深刻な障害をもたらします。

だからこそ血糖コントロールは大切です。しかし、その目的は「数字を治すこと」ではありません。合併症を防ぎ、生活の質を守り、その人がその人らしく生きていくことを支える――それが本当の目標です。

血糖コントロールの目安として、過去1〜2か月の平均的な血糖状態を示すHbA1cが用いられます。一般に、若く元気な人では7%未満、高齢者や合併症を多く抱える人では7.5〜8.5%程度とされます。大切なのは、目標は人によって違うということです。

血糖が下がりすぎた状態を低血糖といいます。冷や汗や動悸、ふらつき、時には意識障害を引き起こします。特に高齢者では、低血糖のサインに気づきにくく、転倒や骨折をきっかけに生活が一変してしまうこともあります。認知機能の低下を招くこともあり、細やかな注意が必要です。

HbA1cを厳しく下げれば、必ずしも寿命が延びるわけではありません。ときにそれは、かえって害になることさえあります。80歳を超え、余命が限られている方や、認知症やADLの低下がある方では、「あえて目標HbA1cを決めない」という選択がなされることもあります。

看護の現場で何より大切なのは、血糖値という数字だけを見るのではなく、その人の暮らしを見ることです。きちんと食事が摂れているか。一人暮らしなのか、支えてくれる人はいるのか。最近ふらついていないか。夜間に低血糖を起こしていないか。そうした日常へのまなざしが、患者さんを守ります。

インスリンやSU薬(スルホニル尿素薬)は、確かな効果をもつ一方で、低血糖という危険と隣り合わせの薬です。だからこそ、看護師の気づきと観察が、医療の質を大きく左右します。

皆さんが現場に立つその日から、知識と技術に、優しさを重ねた看護を、どうか忘れないでください。