
看護学生の皆さんへ
八ヶ岳の峰に残る雪も、いつしか薄くなり、やわらかな春の光が山肌をそっと撫でる季節となりました。
「フレイル」という言葉を、最近よく耳にするようになりましたね。
フレイルとは、年を重ねるなかで、体・心・社会とのつながりを支える力(予備力)が、少しずつ弱くなっていく状態のことを指します。
風邪をひく、転ぶ、薬が変わる、入院する。そんな一見ささやかな出来事をきっかけに、急に歩けなくなったり、寝たきりに近づいたりし、元の生活に戻れなくなってしまう――それがフレイルです。
フレイルは「病名」ではありません。
そして、早く気づけば、進行を止め、改善することができます。
フレイルは、次のような静かな悪循環のなかで進んでいきます。
1. 動かなくなる
2. 筋肉が減る
3. 疲れやすくなる
4. さらに動かなくなる
この輪を、どこで、誰が、どう止められるのか。そこにこそ、看護の力が必要です。
フレイルの判断には、次の5項目のうち3つ以上が当てはまります。
1~2つの場合は「プレフレイル」と呼ばれます。
プレフレイルは、“戻れるチャンス”のある時期であり、看護介入が最も効果を発揮するタイミングです。
1. 歩くのが遅くなった
2. 握力や脚の力が弱くなった
3. 体重が自然に減った
4. すぐ疲れるようになった
5. 外出や活動が減った
フレイルが進むと、転倒や骨折、ADLの低下、施設入所、せん妄、入院や再入院、さらには死亡のリスクまで高まります。しかも、バイタルサインが大きく変わらないまま、静かに重症化することも少なくありません。
だからこそ、日常生活の変化に気づく「まなざし」が、とても大切なのです。
ぜひ、次の点を意識して観察してください。
① 歩き方
歩くスピードが遅い、すり足になっている、ふらつく。歩行速度は「第6のバイタルサイン」とも呼ばれます。
② 動作
椅子から立つのがつらそう、手すりが必要になっている。
③ 生活の変化
外出しなくなった、食事量が減った、「疲れた」が口癖になっていないでしょうか。
看護で特に大切なポイントは、次の3つです。
① 運動
何よりも大切です。
歩行、下肢筋力、バランスを意識しながら、「一緒に少し歩く」こと。それ自体が立派な看護介入です。
② 栄養
タンパク質を意識し、食べられているかどうかを丁寧に見てください。
③ 薬への注意
睡眠薬や抗不安薬、ふらつきやすい副作用のある薬はありませんか。
「転ばせない看護」は、フレイル対策そのものです。
フレイルは、「この人が、これからどのように生きていけるのか」を、そっと教えてくれるサインです。
日々のケアの積み重ねが、フレイルの進行を止める医療であり、そして、看護そのものなのです。