
便秘は、とても身近な症状です。成人の5人に1人が経験するといわれています。
「毎日出ないと異常ですか?」
患者さんから、こんな質問を受けることがよくあります。
実は、3日に1回排便があれば正常です。便秘とは、単に回数が少ないことではありません。出にくい、すっきりしない、強くいきまないと出ない。排便の“つらさ”そのものが、便秘なのです。
だからこそ看護師は、「何日出ていないか」だけでなく、「どれくらい苦しいか」「残った感じはあるか」そんな言葉になりにくい訴えに、耳を澄ませる必要があります。
便秘をみたとき、最初に考えてほしいのは
「何か原因がある便秘ではないか?」という視点です。
とくに多いのは薬剤による便秘です。鎮痛薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、鉄剤、カルシウム製剤、降圧薬(カルシウムチャネル拮抗薬)……「病気を治すための薬」が、便秘の原因となっていることも少なくありません。
そのほかにも、大腸がんや宿便、内分泌疾患、神経疾患、うつ病や活動性の低下など、便秘の背景は実にさまざまです。
次の所見があれば、重大疾患(特に大腸がん)を疑います。
・血便
・高齢者に突然起こった便秘
・ 意図しない体重減少
・ 原因不明の貧血
・45歳以上で大腸内視鏡未施行
・大腸がんの家族歴
「いつもと違う」「急に始まった」など、その違和感に気づけるかどうかは、患者さんのそばにいる看護師の観察力にかかっています。
検査などで明らかな原因が見つからなければ、便秘は機能性便秘と考えます。
腸の動きがゆっくりなタイプ、腸は動いているのに便が硬くて出にくいタイプ、出したいのに体がうまく協調しないタイプ。便秘と一口に言っても、その中身は決して一様ではありません。
便秘の治療で、いちばん大切なのは生活習慣です。
・水分をしっかりとること
・ 食物繊維をとること(グラノーラを含むシリアルがスーパーで手に入ります)
・体を動かすこと
・少し前かがみになって、自然な姿勢で排便すること
薬は、その次です。
浸透圧性下剤(ポリエチレングリコール、酸化マグネシウム)は、便をやわらかくして自然な排便を助けます。
刺激性下剤(センノシド、ピコスルファート)は即効性がありますが、長期乱用は、耐性・依存・大腸黒色症を引き起こします。
便秘とよく混同されるのが、過敏性腸症候群(IBS)です。IBSの特徴は、便通異常に腹痛が伴うことです。
- 排便で腹痛が良くなったり悪くなったりする
- 便秘型(IBS-C)、下痢型(IBS-D)などに分類される
- 若い女性に多く、ストレスと関連が深い
IBSでは、「命に関わる病気ではない」ことを丁寧に説明し、安心を与えることが治療の第一歩です。
命に関わる病気ではありません。だからこそ、患者さんに「大丈夫ですよ」と伝え、不安をほどいてあげること自体が、治療になります。
便秘は小さな症状に見えるかもしれません。けれど、排便がうまくいかないだけで、人は外出を控え、食事を楽しめなくなり、日常の喜びを少しずつ失っていきます。
便秘は、生活の質(QOL)を映す鏡です。
看護師の観察と、さりげない声かけが、患者さんの毎日を静かに支えます。